ヒカキンとサクメイン。魔女たちの行く末とその事の顛末。
嵐、雷鳴、三人の魔女たちが現れる。
一の魔女 いつにしよう、また三人一緒になるのは、雷、稲妻、土砂降りに誘われて?激戦終わって、疲れて起きて、その後で。
二の魔女 場所は、どこだ。
三の魔女 それなら、枯れた木、沼地がいい。年輪の継ぐ大木が、腐りかけるその真下で。そうだ、サクメインに会おう。
一の魔女 そら、さあ、宴へ一番乗りだ!地脈の境、死と活力の溢れ出す東の地へ!
二の魔女 ひき蛙に乗れ!
三の魔女 あいよ!(ラーメン屋亭主の気前の良さ)
暗転
目にクマをつけたサクメイン、沼地に出現する。隣には、同じ姿の死体が横たわる。
サクメイン 何たる冒涜だ!我は汝か、汝か我か、それだけが問題だ。哲学、文学、芸術、この世のありとあらゆる知識を学んだが、ヴァロの待機時間に比べたら、蚊ほどの真理に過ぎなかった。ところで、ここはどこだ、記憶は霧のように曖昧で、どれもくだらない!
Valoアナウンサー 残り、一。
サクメイン おい、空よ。味方と敵の位置を教えろ。その倒れた俺の姿を纏ったの、俺か、それ以外か、さあ問い詰めてやる。
雷鳴、砂塵の嵐。
三人の魔女が現れる。
一の魔女 やるなら、好奇心はなくしなさい。それは意味を持つことだから。彼の前では、無意識に、無意味にふるまうこと。魔女だと忘れるほど。
二の魔女 目的のついではどこへ行った?汚い猫を見つけた。
三の魔女 目的のついではどこへ行く?退屈を見つけに。それは見つからなかった。
一の魔女 釜には何を茹でる?釜の外側、世界を茹でる。
二の魔女 汚い猫の代わりに、毛を手に入れた。夏の小松の毛を鍋に入れた。
三の魔女 出汁は出ず。ヤマサの方がよく出た。
歌う三人、円陣を組み、どんどん加速し宙に浮く。
一の魔女 過去、己の怠惰と向き合うか、日和見ならばぬるい風。
二の魔女 日和見ならば、ぬるい風!
三の魔女 それでは、adeu。
サクメイン なんだ、お前たち!あの舞い、どう見てもこの世のものとは思われぬ。さてはウルトなるものか?あの関節浮き出た皺だらけの指、長い白髪、吹出物の鼻、それに女か。
一の魔女 よく来られた!王の金玉の持ち主!
二の魔女 よくぞ来られた、純白の金玉の持主!
三の魔女 さることながら、失礼するぞ。
一の魔女 去勢とは、都市の歯車を回すか!全く奇抜な知識のガラクタよ。私ら、山奥にすむ世捨てか。呪文とは言霊、記号に乗せればそれすなわち誠なり。
二の魔女 失礼します。(事務的なニュアンス)
サクメイン、右手で股間をまさぐると、袋の中はもぬけの殻。魔女たちは霧に隠れた。サクメインは顔についたほくろをそっと撫でた。
魔女たちは消え、過ぎ去った木枯らしが、場の沈黙を伝える。
サクメイン 行き場のない怒りとは、因果がないことである。私が魔女たちに一体何をしたというのか。しかし、運命が非情ならば、私が非情なのか。今日の飯は常に一定の量と味が保証され、生物は細かくブツ切りにされて、私の舌へと、腹へと。歯車は止まらない。その無限性は、永久に保証されたつもりで進んでいく。一体どこへ。
サクメインは、走った。
「あの、魔女、まるで配送作業の事務作業のように、無機質に、無関心に、不条理にとりやがった!ここで拳をぶつけて木に怒りを晴らそうが、切り抜かれて終わりだ!いや、何なら切り抜かれてしまえばいい。俺が魔女たちに取られたことを洗いざらい全て。冷たく鼠の通った部屋なのだろう」
サクメインは裸足で岩と苔の間を縫うように一歩一歩踏みしめなければならなかった。
間に溜まったぬかるみは自身の筋肉を異常に動かし、骨を痛みつけた。あの沼地が小さくなる頃には、足の指の付け根は泥で擦れ、血にまみれ、その血も次の一歩によって洗い流されていく。
森を出ると、ヒカキンが待っていた。
「すみません、水をくれますか」
「はは、君はね、初対面の人にこういうわけだ。おい!水をよこせ」
「そんな、あんまりです。死を目の前に、そこまで高貴にふるまう理由があるのですか。私は知らない魔女たちに金玉を捕られたのですよ。ああ、じきに下半身も動かなくなる。」
「これをご覧なさい。」
ヒカキンはほとんど砕けて半分になった陶器を見せた。
「この森、昔は国だった。」
ヒカキン周辺の地面には、乱雑に彼の堀った土が散らかっている。被さった砂は雨によって流れ、いずれ滞留し土となる。その痕跡は静的に均され、都市を覆う。
「休日は陶器を発掘するようにしているんだ。自然を忘れない為に。君は水を欲しがる砂か、それとも、この足元の地中の奥底で、議論を交わした人間か」
「すみませんでした。チャンネル登録を怠っていました。その箴言はどこの動画ですか。」
「超巨大スライムプールでリアリズム追求してみた!だ。一度、家に帰って見てみなさい。」
「帰る家は、ありません。私は、生まれた頃から孤独だったのです。それに、今気付いただけなのです。」
サクメインは俯いた。
「臆してはなりません。良ければ私の家に来なさい。」
サクメインはスープを飲み、床についた。彼からは生まれない。私は生まない。彼は孤独だ。私は現在のヒカキンといる。私とは、何のためにいるのか。
夜、サクメインは光線によって、ガス生命体になる夢を見た。まだ会ったことのない人たち。
これから生まれてくる会えない者たち。たとえ現在が泥に穢されようとも。
まだ、もう一人の魔女がいる。今度は自分から献上しよう。残りの魔女に、まだあげていなかった。奪うやつがいるなら、与えてしまおう。そういえば、沼地に横たわる自分を見た!
朝、決心したサクメインは、西から上がる太陽に向かって元いた場所に向かって家を飛び出し、走り出したのだ。その目は曇り一つない朝日をいっぱいに受けた海のよう。
「あの、少女の元へ!」
サクメイン没。その1000年後。
「うわ、なんだそれ!二次元で人が喋ってる!」
「お兄ちゃん!鉄扉開けないでよ!家の580G回線じゃ、この平面動画がオーバーロードに耐えられないの!」
「悪かったよ。でも、真っ暗なblackboxの中は、目を悪くするぜ。」
「昔、崇められていた、神話を見ているの。王がメントスコーラの反動でオリンポス山を飛び越えようとする話。沼地の魔女たちとスライム風呂をする話。この神さま、金玉がなくてもとっても楽しそう!」
「そんなことより、一緒に5次元サッカーしようぜ!」
「うん!」
少女は箱の外に出て走り出した。少年に手を握られて。外へ、外へと。沼地すら乾かしてしまいそうな太陽に連れられて。